本の読み方

以下サイト引用

http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~shakai/seiyosi/howtoread.htm

 本の読み方

      文責 田中ひかる  1999年8月31日

 大学での「勉強」とは、講義、演習・ゼミ、などに「出席していすに座っているだけ・ノートを取るだけ・話を聞くだけ」のことを意味するのではない。

 むしろ、大学での「勉強」では、図書館あるいは自宅で本を読んで知識を自分のものにする、という作業の方が重要なのだ。

 講義やゼミが無駄だ、などと言っているわけではないよ。でもさ、知識を自分のものにしていないままで、難しい講義やゼミにでて何がわかるわけ? 大学の先生がいきなり高校の復習から始めてくれるとでも期待してるわけ? それは甘い。繰り返す。それは、あ・ま・い。

 だから、講義の前には、ちょっとは本でも読んで準備するもんだろ? それをやんないから、いくら講義にでても、「わかんないまま」なのではないのか?

 予習していって、教師を質問責めにするぐらいの気迫を持って、講義には参加して欲しいもんだ。そうでなければ、無駄だよ無駄。講義にでる意味はほとんどないよ。

 
だが、どうやって本を読むのか?
 卒論を書くためにいきなり専門書を最初のページから読み出して「挫折した」、なんて話をよく聞く。「私はあほなんだろうか?」「いや、学者の言葉は難しすぎるんや。わからんもんはわからーん」、といった投げやりな気持ちになるのはよくわかる。

 だが、ちょっとまった。いわゆる学術書、専門書、あるいはそれに近い種類の難しい本を読む方法、あるいはマニュアルというものがある。もしあなたが、本を読み慣れていない人であれば、以下でご紹介するマニュアルに従って、一度難しそうな本を読んでみることをお勧めする。読み慣れている人も、ちょっと読んでみて、この方法を一度試してみてもらいたい。

 ここでご紹介するのは、もともとは1970年代にアメリカの教育学者が大学生向けに提唱した「読書方法」を、少しわかりやすく説明したもんです。アメリカでは、すでに当時から、「本を読めない大学生」が急増して、これへの対処が叫ばれていたんでしょうかねえ? 誰か教えて。ほな、始めまっせ。


1、おおざっぱに内容を知る
 いきなり最初のページから読むな。これが第一の原則。

 ではどこから読むのか? まず、「本の表題、副題」を見よ。それから「目次」をしっかりと読め。そこから、その本の内容を想像してみよう。想像ぐらいできるだろ? できない? バカモーン! ジョン・レノンの「イマジン」、聞かしたろか?

 さて。もしそれぞれの表題なり、各章のタイトルに、知らない言葉などがあった場合は、百科事典とか国語辞典、漢和辞典などでその意味をすぐに調べることだ。

 それと同時に知らなくちゃならんのは、その本を書いたのが誰か、ということ。

 大抵の本には、後ろの方にその人物の履歴が書いてある。何年生まれで今は何歳ぐらいの人であるか? どういう経歴で、その本を書いたのはいつ頃か? どこの大学出身か? これまでどういう本、あるいは論文を書いてきたのか?
 こういう情報も、大体表紙とか、一番後ろの方に書いてある。よく調べれば、どこかに書いてある。見つけなよ、自分で。

 それから、もう一つ重要なのは、日本語の本では必ず「あとがき」というものがあるから、そこをしっかりと読むこと。

 「ええー? うしろからよむわけえ?」。

 そうです。本を読み慣れている人なら、よくやる方法だよね。私は、本屋さんで本を買うときは、まずは「あとがき」を読んで、それからちょっと中身などを読んで、面白かったら買います。「楽しみを取っておきたいから、あとがきはわざと我慢して読まないこともある」という人も知ってるけど、その人は研究者だから、これは高等技術。初心者は読まなきゃ駄目。

 それから、外国語からの翻訳の場合、「前書き」というものがあるし(日本語の本もある場合もあるけど)、「日本語版の読者へ」といったものや、「訳者あとがき」なんてものもある。こういった所も必ず読んだ方がいい。

 そこではたいていの場合、なんでその著者がその本を書きたかったのか、どういう経緯で書くようになったのか、著者はどういう経歴でどういう研究をしてきて、それがその本とどういうつながりがあるのか、その本で著者が一番言いたかったことは何か、といったことが説明されていることが多い。本のおおざっぱな内容を知るのであれば、まあ、一番手っ取り早いのはこの辺から読むことだね。

 それから、各章の一番最初の数行と、一番最後の数行も、最初に読んでみると良い。そうすると、この著者が何を問題にしているのか、ということがさらにわかってくる。この辺を読んだら、もう一回「あとがき」を読み返してみると、なお良い。おわかりかな?

 何でいきなり最初から読まないのか? それは、いきなり読み始めれば、「挫折」する可能性が高くなるからだ。

 全く知らない土地に行っていきなりいろんなこととぶつかり合えば、ちょっとそこにいるのがイヤになる、というたとえでわかるかなあ? それよりも、まずそこに行ったことのある人に話を聞くとか地図を見てみるとか、旅行ガイドを読むとかしてから行った方が、ショックが少ないし、その土地についてもっと知ろうという気持ちもわいて来るというもんでっしゃろ。ちょっといいたとえ話ではないか。でも何となくわかるでしょ。

 つまり、「いきなり読む」のとは異なり、表題、「あとがき」なんかから攻めていくのは、一見遠回りだが、まだその本と長くつきあえる余地を残すのである。しかも、この作業を通じて、「何となく」「大ざっぱな内容」を「想像」することができ、そして、その本に対する自分の興味が、それ以前よりもずっとたくさんたくさん、わいてくる。
 ここまでできた? では、第二のステップに進もう。


2、質問を作る
 まだいきなり最初から読んではいかんよ。

 次にやるのは、1の作業をやっている間に自分の頭の中に浮かんできた、その本に対する自分の質問事項をいくつか作る、という作業だ。

 「この言葉の意味は何ですか」という初歩的なものからもっと高度なものまで、その本が書いてくれたらありがたいなあ、何となくそういうことについても説明していないかなあ、といった、自分の疑問をはらしてくれる答えを求めるような、「自分の質問」をいくつか書き留めておくこと。多ければ多いほどいいな。

 でも、難しい本を読むときは、レポートを書く、とか、試験の準備とか、あるのは、極めて限られた目標なわけでしょ。だから、「質問」だってそんなにたくさんになるわけではない。自分の「目標」にあった「質問」を作ればいいんだ。わかった?

 実はこの作業は、結構重要です。

 読者は、こういう「自分独自の質問」を作っておくことによって、本の中に自分で作った質問=自分がとても知りたいこと、への答えを探すわけです。したがって、「偏った読書」にはなりますが、自分の質問とは関係ないところは読み飛ばせることにもなります。本を読み慣れていない人にすれば、読書の「苦痛」は減ります。

さあ、いくつ質問ができたかな? できた人は第3のステップに進むこと。


3、自分が作った質問の答えを探しながら、読む
 では、第2のステップで作った「質問表」を片手に、最初のページから読んでみよう。
 あーらふしぎ、専門書って、結構読めるやん、ということになればしめたもんだ。むむ、よくわからんぞ、という人も、なんとか読み進めることができるでしょ? やっぱ、だめだこりゃ、という気持ちにはならないはず。少なくとも1,2のステップをきっちりやっていればだが。

 質問表には必ず「答え」をメモしていこう。長々と本文を写してみるのもいいし、ページ数とキーワードだけでもいい。自分の疑問を、その本は解消してくれたかな?

 でもこれだけでは駄目。「読んだ」ことにはならない。これだけではぜーったいに駄目。もっと重要なのが、次の第4のステップ。はい、準備はいいかな?


4、「自分の言葉」で「要約文」を作る
  このステップでは、「自分なりに読めば、この本の内容は、大体こういうことだ」ということを、他人に説明するために文章を書く作業をします。

 つまり、その本の内容を要約した文章を書いてみること。しかも、人にわかりやすく書く。想定する読者としては、高校生か、中学生、もしくは両親とか同学年の友人。こう書いたらあの人はわかってくれるかなあ? ということを考えながら書く、という工夫が必要。

 ここで大変に重要なことは、その文章の中では、本文からの引用=本にある文章を直接書き写すこと、を決してしない、ということ。「自分の言葉」で「要約する」のが本当の「要約」なんだから。だから、本文の文章をそのまま書き写すのは駄目です。

 ここで第3のステップでつくった質問と解答が生きてきます。
 「自分なりの」要約なんだから、他人がなんと言おうと、この本はこういう疑問について、あるいはこういう問題を、こういうふうに説明してくれています、少なくとも自分はそう読みました、でいいわけ。

 繰り返すが、「自分の言葉」を使って、自分の疑問とその答えを中心にして要約文を書かねばならない。やってはいけないのは、本文の文章をそのまま使うこと。これは、やってはいけないよ。

 どうしてかっていうと、本文からの引用ってすごく簡単な作業じゃない? しかも、一部分がわかんなくても、書き写すと、何となく分かった気持ちになってしまうもんなんだ。

 でもそれは、本当は「わかっていない」ということなんだよ。本当に自分で「わかった」という状態になるためには、やっぱりわかりやすく自分の言葉でまとめる、というプロセスが必要なんだ。結構苦しいけどね。でも一回やると、これから絶対に役に立つよ。

 文章を書くのが面倒な人、います? じゃ、テープに吹き込んじゃえ。テープに吹き込んで、それで本を書く、というプロのライターもいますから、それもありです。まあ、でも、レポートを書くんだったら、やっぱり文章にしておいた方がいいんだけどね。

 さあ、要約文ができたかな? だが、これではまだ7割ぐらいの「読書」。仕上げの第5ステップに進もう。


5、総合的な要約文を書く
 4で書いたのは、「自分なり」の要約文だったでしょ? ここでやるのは、そういう独善的なものではなくって、その本の中身をさらに詳しく調べた上で、詳しい要約文を作る、という作業。

 どうするかというと、まず、本の各章の最後の数行を見ていく。そうすると、そういった文章は、大体それぞれの章の結論部分なわけだ。だから、自分が興味を持たなかった問題に関する結論も、この時点で確認することができるわけ。そうしたら、そういった結論や問題も全部含めた要約文をもう一回書く。

  でも、単に書き加えるだけでは駄目だよ。やっぱり全面的に書き直しが必要でしょうね。

 さあ、ここまでできたら、とりあえず「読書」は終了します。

 ただし、いつもいつも必ずこれをやれ、というのではない。現代人は時間がないしね。でも、最初の一行目から読んで数ページで「挫折」するよりは、この方法の方が、ずっと効率的かつ効果的なんだよ。

 まあ、1回はやってみること。その後は、難しい本を読むコツがわかってくるから、全部頭の中の作業で終わるかもしれないし、メモを取る作業、本に線を引く作業がそれに付け加わるかもしれない。

 ちょっとまった。図書館の本には線を引くなよ。おい、お前だよ、お前。やめなさい。公共の財産なんだ、おい。借りてきた本だったら、ポスト・イット、というヤツ(付箋)をべたべた張り付けていけばいいんだよ。あれだったらのりも残らないし。本は大切に扱えよな。

 以上、本の読み方でした。参考にしてね。感想もお待ちしてます。

西洋史研究室Top